研究者詳細

顔写真

タカハシ タカユキ
髙橋 尚志
Takayuki Takahashi
所属
災害科学国際研究所 災害評価・低減研究部門 陸域地震学・火山学研究分野
職名
助教
学位
  • 博士(環境学)(東京大学)

  • 修士(理学)(首都大学東京)

経歴 7

  • 2021年1月 ~ 継続中
    東北大学 災害科学国際研究所 災害評価・低減研究部門 助教

  • 2019年5月 ~ 2020年12月
    東京都立大学 火山災害研究センター 特任研究員

  • 2019年2月 ~ 2019年4月
    国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質情報研究部門 テクニカルスタッフ

  • 2025年9月 ~ 継続中
    東北大学 理学研究科 地学専攻 自然災害学グループ

  • 2021年4月 ~ 2025年9月
    東北大学 理学部 地球科学系 地圏環境学科 自然災害学グループ

  • 2022年4月 ~ 2025年3月
    東北学院大学 文学部歴史学科 非常勤講師

  • 2020年4月 ~ 2021年3月
    東京未来大学 モチベーション行動科学部 非常勤教員

︎全件表示 ︎最初の5件までを表示

委員歴 3

  • 日本第四紀学会 選挙管理委員長

    2024年10月 ~ 継続中

  • 東北地理学会 編集委員

    2023年7月 ~ 継続中

  • 日本第四紀学会 庶務委員

    2020年8月 ~ 2021年7月

所属学協会 7

  • American Geophysical Union

    2024年7月 ~ 継続中

  • 東北地理学会

    2021年12月 ~ 継続中

  • 日本山の科学会

    2019年5月 ~ 継続中

  • 日本地形学連合

    2016年 ~ 継続中

  • 日本地理学会

    2015年 ~ 継続中

  • 日本第四紀学会

    2014年6月 ~ 継続中

  • 日本地球惑星科学連合

    2014年5月 ~ 継続中

︎全件表示 ︎最初の5件までを表示

研究キーワード 7

  • GIS

  • 斜面崩壊

  • 河川災害

  • 火山噴火史

  • 土砂動態システム

  • テフロクロノロジー

  • 河成段丘

研究分野 3

  • 自然科学一般 / 地球人間圏科学 / 第四紀学

  • 自然科学一般 / 地球人間圏科学 / 地形学

  • 人文・社会 / 地理学 / 自然地理学

受賞 5

  1. 日本第四紀学会2024年度奨励賞

    2024年8月 日本第四紀学会

  2. 日本第四紀学会2024年度論文賞

    2024年8月 日本第四紀学会

  3. 日本地形学連合2023年秋季大会若手発表賞

    2023年11月 日本地形学連合

  4. 日本地球惑星科学連合2017年大会学生優秀発表賞

    2017年5月 日本地球惑星科学連合

  5. 日本地球惑星科学連合2016年大会学生優秀発表賞

    2016年5月 日本地球惑星科学連合

論文 10

  1. High-definition topographic archiving and educational applications in regions affected by the 2024 Noto Peninsula Earthquake 査読有り

    Takuro Ogura, Hiroyuki Yamauchi, Tatsuto Aoki, Nobuhisa Matta, Kotaro Iizuka, Yoshiya Iwasa, Takayuki Takahashi, Kiyomi Hayashi, Tsuyoshi Hattanji, Takashi Oguchi

    Journal of Disaster Research 2025年8月1日

    DOI: 10.20965/jdr.2025.p0401  

  2. Integrated multihazard study combining qualitative and quantitative analyses of floods, landslides, and debris flows: A case study on the impacts of Typhoon Yun-Yeung on Iwaki City, Fukushima 査読有り

    Nilo Lemuel, J. Dolojan, Takayuki Takahashi, Masakazu Hashimoto, Akihiro Shibayama, Reika Nomura, Kenjiro Terada, Shuji Moriguchi

    International Journal of Disaster Risk Reduction 2025年6月

    DOI: 10.1016/j.ijdrr.2025.105647  

  3. Landscape changes caused by the 2024 Noto Peninsula earthquake in Japan. 国際誌 査読有り

    Yo Fukushima, Daisuke Ishimura, Naoya Takahashi, Yoshiya Iwasa, Luca C Malatesta, Takayuki Takahashi, Chi-Hsien Tang, Keisuke Yoshida, Shinji Toda

    Science advances 10 (49) eadp9193 2024年12月6日

    DOI: 10.1126/sciadv.adp9193  

    詳細を見る 詳細を閉じる

    Landscapes are shaped by tectonic, climatic, and surface processes over geological timescales, but we rarely witness the events of marked landscape change. The moment magnitude 7.5 Noto Peninsula earthquake in central Japan was caused by a large thrust faulting, up to nearly 10 meters of slip, that expanded more than 150 kilometers along the fault zone. The deformation field reconstructed from satellite data and field surveys reveals up to 4.4 meters of uplift and associated coastal advance along the entire northern coast of the peninsula, meter-scale systematic movement of the mountain slopes consistent with slip on flexural faults, and activation of secondary inland faults, suggesting synchronized ruptures. The findings show excellent consistency between the coseismic deformation and geomorphic features and provide a vivid example of the role of a major earthquake in landscape formation.

  4. 伊豆諸島北部,利島における更新世末期の流紋岩質テフラの層序 査読有り

    高橋 尚志, 青木 かおり, 村田 昌則, 小林 淳, 鈴木 毅彦

    第四紀研究 61 (3) 87-107 2022年9月

    DOI: 10.4116/jaqua.61.2104  

    ISSN:0418-2642

  5. 基礎データから考える第四紀学の新展開 伊豆大島北・西部におけるカルデラ形成以前のテフラ

    寺山怜, 小林淳, 村田昌則, 高橋尚志, 鈴木毅彦

    月刊地球 44 (3) 147-155 2022年3月

    ISSN:0387-3498

  6. Luminescence dating of cobbles from Pleistocene fluvial terrace deposits of the Ara River, Japan 査読有り

    Yuji Ishii, Takayuki Takahashi, Kazumi Ito

    Quaternary Geochronology 67 101228-101228 2022年2月

    出版者・発行元: Elsevier BV

    DOI: 10.1016/j.quageo.2021.101228  

    ISSN:1871-1014

  7. Spatiotemporally varying inter-relationships between mainstem riverbed elevation and tributary sediment supply since the last interglacial in the upper Ara River, central Japan 国際誌 査読有り

    Takayuki Takahashi, Toshihiko Sugai

    Geomorphology 383 107697-107697 2021年6月

    出版者・発行元: Elsevier BV

    DOI: 10.1016/j.geomorph.2021.107697  

    ISSN:0169-555X

  8. 伊豆諸島,神津島における過去3万年間のテフラ層序と噴火史 査読有り

    村田 昌則, 小林 淳, 青木 かおり, 高橋 尚志, 西澤 文勝, 鈴木 毅彦

    地学雑誌 130 (3) 379-402 2021年

    出版者・発行元: 東京地学協会

    ISSN:0022-135X

  9. 関東地方,荒川狭窄部における河成段丘発達過程および荒川本流の河床縦断面形変化史に関する再検討 査読有り

    高橋 尚志, 須貝 俊彦

    地学雑誌 129 (1) 123-140 2020年

    出版者・発行元: 公益社団法人 東京地学協会

    DOI: 10.5026/jgeography.129.123  

    ISSN:0022-135X

    詳細を見る 詳細を閉じる

    <p> Based on a sedimentological analysis and tephrochronology, development of the Ara River terrace is reconstructed focusing on the Nagatoro Gorge between the Chichibu Basin and the Arakawa Fan. Terrace treads along the Nagatoro Gorge can be classified into Oy1, Oy2 and Hg. Oy1 comprises eroded remnants of the fill terrace probably formed in Marine oxygen Isotope Stage (MIS) 6. Oy2 and Hg are toe-cut terraces formed by tributaries from MIS 3 to MIS 2 and early Holocene, respectively. The possible range of the elevation of the Ara River floodplain in the Nagatoro Gorge during MIS 3 and MIS 2 is reconstructed by extending the cross-sectional profiles of Oy2 terrace treads. The longitudinal profile of Ara River in the Nagatoro Gorge during MIS 3 and MIS 2 continues to that of paired terraces formed in the last glacial period: Kagemori Terrace in the Chichibu Basin and Miizugahara-1 Terrace in the Arakawa Fan. The profile of the Ohnohara Terrace of the Chichibu Basin and the Nagatoro Gorge continues to that of the Hanazono Terrace of the Arakawa Fan. As a result of continued lateral erosion of the Ara River during the two periods, wide floodplains formed throughout the three segments of the Chichibu Basin, the Nagatoro Gorge and the Arakawa Fan in the last glacial period and the early Holocene. During these periods, most sediments passed through the Nagatoro Gorge and were discharged onto the Kanto Plain. The river began to incise in the Holocene throughout all three segments.</p>

  10. Tributary effects on fluvial terrace development since the last interglacial in the upper Tama River valley, central Japan 査読有り

    Takayuki Takahashi, Toshihiko Sugai

    Quaternary International 471 318-331 2018年4月

    DOI: 10.1016/j.quaint.2017.11.036  

    ISSN:1040-6182

    eISSN:1873-4553

︎全件表示 ︎最初の5件までを表示

MISC 4

  1. 書評 小野映介・佐藤善輝:地球環境史研究―地理学と考古学・歴史学の接点―

    高橋尚志

    地理学評論 98 (2) 64-65 2025年3月

  2. 荒川上流,秩父盆地の河成段丘と気候変動

    高橋尚志

    地図中心 2024年 (1月号) 20 2024年1月

  3. 水文解析を用いた河川上流域における長期的土砂移動過程の復元

    高橋 尚志

    GIS NEXT 69 2019年10月

  4. 巡検第3班 秋川丘陵と秋留台地における地形発達と土地利用,植物分布との関わり

    小泉 武栄, 野中 規夫, 佐々木 夏来, 高橋 尚志

    E-journal GEO 13 (1) 418-419 2018年

    出版者・発行元: 公益社団法人 日本地理学会

    DOI: 10.4157/ejgeo.13.418  

講演・口頭発表等 62

  1. 神奈川県柏尾川流域における地下文化遺産を活用した災害リスクの評価のための基礎調査

    田村 裕彦, 小倉 拓郎, 高橋 尚志, 佐藤 昌人, 小口 千明

    日本地理学会発表要旨集 2025年

    詳細を見る 詳細を閉じる

    近年の短時間強雨の発生頻度上昇により,中小河川流域における斜面災害や河川災害の頻度も増加傾向にある.しかし,現状では大河川でのみ災害リスク評価の研究が進み,中小河川流域における研究事例は僅少である.このような研究を進めていくには,地下文化遺産(Underground Built Heritage; 以下,UBH)の活用が効果的な手段となる.すなわち,UBHは人類史における様々な自然災害を経験した人工物かつ不動産の「地盤遺跡」であり,当該地域の災害履歴を地考古学の観点から把握可能な重要な物証である.特に,都市周辺に残存するUBHは,温暖化に伴う自然災害の激化に加え,その上部の土地利用形態の変化による人的インパクトも受け,災害リスクも高まっている状態と推察される. そこで,中小河川流域の災害リスクを評価するため,横浜市栄区の柏尾川および㹨川(いたちがわ)流域内に現存するUBH (Fig.1) を対象に基礎調査を行うこととした.本稿では,それらのうち特に「田谷の洞窟」と「宮ノ前横穴墓群」を対象としたLiDAR測量や地質調査の結果を報告する. 本対象流域には,中世頃から大きな集落があったと考えられており, 現在,谷戸を中心に公共施設や都市インフラが整備されている. 本流域には,内陸まで低平な沖積低地が広がり,以前は外水氾濫が頻繁に発生していたが,柏尾川の治水事業が進められた結果, 現在はその支流である㹨川流域における内水氾濫のリスクが高まっているとされる.また.流域の斜面には急傾斜地崩壊危険区域や土砂災害警戒区域も広がっており,水害と斜面災害の複合災害リスクが懸念されている. UBH内外の高精細地形情報の把握のため, UAV/LiDAR及び地上においてモバイルLiDAR-SLAMによる測量を実施し, 対象UBHの高精細空間情報を確認した. また, UBHの風化状態を目視調査し横浜市で公開しているボーリングデータ等から周辺地質環境を精査した. まず,各種LiDAR測量から, UBH空間構造と微地形の詳細な位置関係を把握した.すなわち,2つのUBHは水害リスクを避けるため,勾配が急かつ標高の高い急崖斜面を掘り進めて築造されていた. 特に,宮ノ前横穴墓群は土被り厚さが薄く, 上部の放置樹木の根による崩壊が確認できた.急傾斜の崖地が周辺に連続しており, 斜面崩壊の災害リスクも高い. 双方のUBHの構成地盤は, 海成層由来のシルト岩であるが, 田谷の洞窟の方がより軟岩質で洞窟内には地下水による湧水も存在しており,地表付近では乾湿風化が観察できた. また,蘚苔類や藻類の繁茂も確認され,これらが洞窟壁の岩盤の風化に影響を与えている.一方,宮ノ前横穴墓群では,硫酸マグネシウムを主体とする析出塩(エプソマイト:MgSO4・7H2O)が観察された.この塩は,顕著な塩類風化をもたらすことが報告されており,この地域におけるUBHの経年劣化に多大な影響を与えていることが推察される. また,本研究により取得された対象UBH周辺のLiDARデータは,中小河川流域における災害リスクの評価資料として活用できる可能性がある.得られたデータをビジュアル化することで, UBHが地域防災教育の有効な教材(地物)になり得るか,検討を進める予定である.また,UBHを構成する基盤岩の風化状況についても追加データを取得するとともに,柏尾川域の河川地形発達史や洪水履歴の復元も進めることで,流域の地考古学的景観の変遷史と災害リスクの時空間変化を包括的に明らかにできると期待される.

  2. Estimated volume and magnitude-frequency distribution of landslides induced by the 1923 Kanto Earthquake (Mw 7.9) in the western Kanagawa Prefecture, central Japan

    Takayuki Takahashi, Yuki Yamane, Kiichi Suwa, Shinji Toda

    AGU24 Fall Meeting 2024年12月

  3. Landscape Changes Associated with the 2024 Noto Peninsula Earthquake, Japan, Revealed Through Integration of Geodetic and Geomorphological Approaches 招待有り

    Yo Fukushima, Daisuke Ishimura, Naoya Takahashi, Yoshiya Iwasa, Luca Malatesta, Takayuki Takahashi, Chi-Hsien Tang, Keisuke Yoshida, Shinji Toda

    AGU24 Fall Meeting 2024年12月

  4. 東北地方,栗駒火山における完新世の水蒸気噴火堆積物の層序と規模

    諏訪貴一, 高橋尚志, 遠田晋次, 市川玲輝

    日本第四紀学会講演要旨集(Web) 2024年

  5. 相模川中流域では最終間氷期以降に河谷の埋積は2回あったか?

    高橋尚志, 石井祐次

    日本第四紀学会講演要旨集(Web) 2024年

  6. 令和6年能登半島地震に伴い発生した内灘町の液状化・側方流動による地表変状の分布からみた地形変化の影響

    原勇貴, 遠田晋次, 高橋尚志, 鳥井真之, 塚脇真二

    日本応用地質学会東北支部研究発表会講演集 2024年

  7. 東北地方,栗駒火山における中期完新世以降のラハール堆積物と泥質テフラの規模と年代

    高橋尚志, 市川玲輝, 諏訪貴一, 小倉拓郎, 遠田晋次

    季刊地理学 2024年

  8. 画像解析を用いた相模川中流域における河成段丘礫の円磨度の計測

    高橋尚志, 太矢敦士, 石村大輔

    日本地理学会発表要旨集 2024年

  9. The changing connectivity between tributaries and mainstem rivers under climatic changes during glacial-interglacial cycles

    Takayuki Takahashi, Toshihiko Sugai

    XXI INQUA Congress 2023年7月

  10. A 30,000 yr high-precision eruption history in the north Izu Islands, off Tokyo, Japan

    Takehiko Suzuki, Kaori Aoki, Makoto Kobayashi, Masanori Murata, Fumikatsu Nishizawa, Takayuki Takahashi

    XXI INQUA Congress 2023年7月

  11. 神奈川県西部の山地域における大正関東地震に伴う斜面崩壊による土砂生産

    高橋尚志, 山根悠輝, 諏訪貴一

    日本地形学連合発表要旨集(Web) 2023年

  12. 相模川支流,道志川流域における支流合流点付近の段丘発達過程と支流の地形特性

    高橋尚志

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2023年

  13. 東北地方,栗駒火山における完新世中期以降の水蒸気噴火に伴う降下テフラの空間分布と給源の推定

    諏訪貴一, 高橋尚志, 市川玲輝, 遠田晋次

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2023年

  14. 2022年7月の宮城県北部における大雨に伴う大崎平野の河川氾濫とその地形学的背景

    高橋 尚志, 橋本 雅和, 森口 周二

    日本地理学会発表要旨集 2023年

    詳細を見る 詳細を閉じる

    2022(令和4)年7月に宮城県北部で発生した大雨に伴い,大崎平野を流れる複数の小河川にて破堤を伴う洪水氾濫が発生した.本発表では,この氾濫の概要(橋本ほか,投稿準備中)を報告するともに,その発達史地形学的な背景についても予察的に議論する. 2022年7月15~17日にかけて,宮城県大崎市古川のアメダス観測所では最大で70 mm近い時間雨量の強雨が観測された.この大雨によって,大崎平野を流れる鳴瀬川水系・多田川支流の名蓋川,ならびに北上川水系・江合川支流の出来川で人工堤防の越水・破堤が発生し,河川流が堤内地に流入した.大崎平野は,鳴瀬川と江合川の土砂堆積によって形成された沖積低地からなり,丘陵によって盆地状に囲まれている.大崎平野を流れた鳴瀬川および江合川は,松島丘陵や旭山丘陵を貫通して松島湾および石巻平野へと流出する.氾濫が生じた名蓋川・出来川は,上記の2河川の小支川であり,大崎平野の蛇行原上を流れている. 名蓋川では右左岸の3ヶ所で破堤が発生し,多田川との合流点から約300 m上流の左岸で生じた破堤が最も規模が大きかった.原因として,多田川の水位上昇に伴うバックウォーター現象が発生して破堤が誘発された可能性が考えられる.出来川では,JR石巻線橋梁のすぐ上流の右岸で破堤が発生した.氾濫当時は河道内に植生が繁茂していたため,水流に対する抵抗が大きかったことが滞水と水位上昇,破堤をもたらした可能性がある. 出来川の破堤地点では,長さ約70 m以上のクレバススプレーが堤内地の水田を覆って形成された.クレバススプレー堆積物は,最大層厚約70 cmの砂礫であり,有機質泥の偽礫や瓦礫を含み,全体的にはやや級化していた.砂礫の最大礫径は約15 cmほどで,亜角礫も含まれていた.出来川の河床勾配や,形成された地形の規模や堆積物の層相などを踏まえると,このクレバススプレー堆積物のほとんどは上流から運搬された土砂ではなく,水流によって破壊・侵食された人工堤体(土嚢)や水田土壌が起源であると推測される. 出来川の破堤によって,戦後まで出来川下流に存在していた名鰭沼(なびれぬま)の旧水域とその周辺で浸水が生じた.現在では,名鰭沼の旧水域は干拓され,出来川は人工堤防によって名鰭沼干拓地を貫流して江合川に直接合流している.名鰭沼干拓地は周辺の氾濫平野よりも標高が約1~2 m低く,遊水地にされている.出来川の破堤地点の約1.5 km上流右岸には遊水地への越水堤が設置されており,今回の大雨でもこれが一定程度機能したものと考えられる. 干拓・土地改良前の名鰭沼は出来川の水流が流入することで溢れやすく,周辺への浸水被害が繰り返されてきた(加藤・工藤,1984など).名鰭沼は,江合川と鳴瀬川の自然堤防や氾濫平野,ならびに旭山丘陵によって囲まれた後背沼沢地ないし後背湖沼(鈴木,1998)であったと考えられる.縄文海進期には,名鰭沼を含め大崎平野東部は海域だったと考えられている(長谷,1967; Matsumoto, 1981)が,その後の江合川・鳴瀬川の土砂堆積によって形成された大崎平野の沖積低地の微地形とその形成年代に関しては不明な点も多い.大崎平野における洪水リスクを中~長期的な視点で評価し,持続可能な治水を実現するためには,江合川と鳴瀬川の両河川およびそれらの小支川も含めた,完新世以降における自然・人為両作用による河道変遷史・河川改修史の解明・整理が必要であろう. 謝辞:(株)復建技術コンサルタントには調査協力を頂いた. 文献: 長谷(1967)東北大地質学古生物研邦報,64,1-45; 橋本ほか(投稿準備中)自然災害科学; 加藤・工藤(1984)農業土木学会誌,52,585-592; Matsumoto (1981) Sci. rep. of Tohoku Univ. Ser.7 (Geography), 31, 155-171; 鈴木(1998)『建設技術者のための地形図読図入門第2巻―低地―』古今書院,354p.

  15. 相模川中流域,葛原周辺における最終間氷期以降の河谷埋積過程

    高橋 尚志, 石井 祐次

    日本地理学会発表要旨集 2023年

    詳細を見る 詳細を閉じる

    東北~中部日本の諸河川の上~中流域には,最終間氷期から最終氷期にかけての河床上昇(河谷の埋積)により形成された最終氷期の堆積段丘が発達する.最終間氷期から最終氷期における気候水文環境変化に伴う山地河川の応答や,103~104年スケールでの土砂移動過程を明らかにする上でも,堆積段丘構成層の層相や堆積年代,埋積速度などの資料を蓄積し,河谷の埋積過程を詳細かつ実証的に復元する必要がある.関東地方南部,相模川中流域には,後期更新世前半の堆積段丘を構成する,葛原層と呼ばれる地層が分布する.後述する通り,葛原層中部は細粒砂~シルト層から構成されるが,その形成環境や形成要因については十分な議論が行われていない.本報告では,相模川中流域,相模原市葛原地区とその周辺において後期更新世に形成された堆積段丘堆積物の層相と挟在するテフラの標高,ならびに礫表面から得られるOSL年代に基づき,相模川支流,芝田川沿いにおける河谷の埋積過程と,葛原層の形成要因について議論する. 相模川上~中流域には,後期更新世に形成された2段の堆積段丘が発達する.すなわち,ⅢS面(相模原面)とⅢT面(田名原面)である.最終間氷期に形成された河谷が最終間氷期後半に主に砂~シルトによって埋積され,Hk-TP降下期(66 ka)以前に前者が形成された.その後,わずかな下刻期を挟んで再び河谷が埋積され,AT降下期(30 ka)までに後者が形成されたと考えられている. 葛原層は,相模原市緑区葛原の芝田川下流右岸を模式地とする層厚約40 mの段丘堆積物で,上記のⅢS面を構成する.上部の礫層,中部の細粒砂~シルト層,下部の砂礫層に細分され.中部の細粒砂~シルト層中には複数の珪長質なテフラ層(下位からOn-Pm1,K-Tz,On-Kt,On-In,Tz-3,Aso-4)や,泥炭・植物片が挟まれる.上記から本層は,テフラ層序や花粉化石の研究対象となってきた.しかし,葛原層中部層の形成過程や形成要因は十分に議論されておらず,「小河川堆積物」や,地盤沈降によって生じた「静水域」,「湖沼状の堆積環境」の堆積物などと記載・解釈されているにとどまる. 上野原南東の相模川左岸には,孤立した丘陵によって本流の河谷と隔てられた長さ約2.5 km,幅約1 kmの無能谷が,芝田~葛原~鶴島にかけて東南東―西北西方向に通っている.この谷中には,北へと緩傾斜し,開析されたⅢS面が発達しており,葛原層はこの段丘面の構成層として,谷中を穿入蛇行して流れる芝田川沿いの河食崖などで観察可能である.芝田川沿いで観察される葛原層中に挟在するOn-Pm1(95~100 ka)やAso-4(87~89 ka)の高度から,それぞれのテフラが降下した当時の芝田川の河床勾配を推定すると,いずれも約1~2%程度であった.一方,芝田川の現河床の平均勾配は約5.5%程度(蛇行を考慮しない場合)である.葛原層中部の砂~シルトが堆積していた当時の芝田川の河床勾配は,現河床のそれと比べてやや緩勾配であった可能性がある. また,相模川本流沿いでも埋谷性の段丘堆積物がみられる.相模川右岸の小渕では,木片や黄褐色風化火山灰層などを挟む砂~シルト層の上に円礫層が累重する.その円礫層の最下部から採取された花崗閃緑岩礫からは,62.9±15.0 ka のIR50/225年代,104.8±29.8 kaのpIRIR50/225年代値(いずれもフェーディング補正済み)が得られた.ただし,本年代は,ブリーチが不十分であり,過大評価である可能性がある.相模川本流の河床上昇速度に関しては,今後より多くの年代試料を得て議論する必要はあるが,葛原付近では,最終間氷期後半の相模原本流の河床上昇に応答して,埋積開始時に無能河川化していた支流が著しく緩勾配化し,蓋し閉塞され滞水したことで,砂~シルトが上記の谷を埋めて堆積し,葛原層中部が形成された可能性がある.本研究は,JSPS科研費21K13151の助成を受けた.

  16. 相模川支流,道志川流域における最終間氷期以降の河谷埋積過程に関する一考察

    高橋尚志, 松風潤

    日本地形学連合発表要旨集(Web) 2022年

  17. 画像解析を用いた河川における礫粒子の円磨度変化-常願寺川,相模川,四万十川を例に-

    石村大輔, 高橋尚志

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2022年

  18. 埼玉県,加須低地西部における沖積低地の地形形成過程-テフラ分析に基づく検討-

    村田昌則, 高橋尚志, 青木かおり, 佐藤潤一, 鈴木毅彦

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2022年

  19. 栗駒火山北麓の大規模地すべり地にみられる二次すべりの発生年代

    市川玲輝, 高橋尚志, 遠田晋次

    季刊地理学 2022年

  20. 埼玉県東部,元荒川沿いの沖積層上部を構成する再堆積性火山砕屑堆積物

    村田昌則, 高橋尚志, 青木かおり, 西澤文勝, 小林淳, 鈴木毅彦, 鈴木毅彦

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2021年

  21. 河川による内陸から海域への軽石の運搬過程:利根川における2019年台風19号の例

    平峰玲緒奈, 石村大輔, 高橋尚志

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2021年

  22. 秩父盆地における河成段丘構成層中の花崗閃緑岩礫を用いたOSL年代測定

    石井祐次, 高橋尚志, 伊藤一充

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2021年

  23. 岩種組成と形状的特徴の変化から考える神奈川県西湘海岸における中礫の運搬過程

    白井正明, 秋山朋美, 河尻清和, 宇津川喬子, 高橋尚志

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2021年

  24. 2017年九州北部豪雨に伴う河川地形変化と更新世末期以降の筑後川支流の段丘発達

    高橋尚志, 須貝俊彦

    日本第四紀学会講演要旨集 2021年

  25. 火山噴出物の再移動による埼玉県東部元荒川沿い沖積低地形成への影響

    村田昌則, 高橋尚志, 青木かおり, 西澤文勝, 小林淳, 鈴木毅彦

    日本地理学会発表要旨集 2021年

  26. Construction of late Quaternary eruption history in and around the Izu Volcanic Islands, off Tokyo

    Kaori Aoki, Makoto Kobayashi, Masanori Murata, Fumikatsu Nishizawa, Takayuki Takahashi, Takehiko Suzuki

    AGU Ocean Science Meeting 2020 2020年

  27. 伊豆諸島,神津島火山における過去3万年間の噴出量

    村田 昌則, 小林 淳, 青木 かおり, 高橋 尚志, 西澤 文勝, 鈴木 毅彦

    日本火山学会講演予稿集 2020年

  28. 伊豆諸島北部,利島における流紋岩質テフラの層序と対比

    高橋尚志, 青木かおり, 村田昌則, 小林淳, 鈴木毅彦

    日本第四紀学会講演要旨集 2020年

  29. 房総沖掘削コアC9010Eのテフラ層序-利島で発見された新たな流紋岩質テフラと浅間火山起源テフラ-

    青木かおり, 高橋尚志, 小林淳, 村田昌則, 鈴木毅彦

    日本第四紀学会講演要旨集 2020年

  30. 都留市/大月市境付近での猿橋溶岩の分布と桂川の河道変遷

    白井正明, 高橋尚志, 宇津川喬子, 河尻清和

    日本第四紀学会講演要旨集 2020年

  31. 伊豆諸島,神津島北部で発生した9世紀天上山噴火に先立つ噴火

    村田昌則, 小林淳, 高橋尚志, 青木かおり, 鈴木毅彦

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2020年

  32. 地すべりが創り出す山岳地域の湿地景観 招待有り

    佐々木夏来, 須貝俊彦, 高橋尚志

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2020年

  33. 相模川(桂川)上流域における富士相模川泥流堆積物の分布と岩相変化

    白井正明, 小林淳, 宇津川喬子, 河尻清和, 高橋尚志

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2020年

  34. 伊豆諸島神津島火山 穴の山におけるテフラ層序と対比

    村田 昌則, 小林 淳, 高橋 尚志, 青木 かおり, 鈴木 毅彦

    日本火山学会講演予稿集 2019年

  35. 関東地方,多摩川・荒川上流河谷における,支流性堆積物の滞留・再移動と後期更新世以降の河成段丘面の形成

    高橋 尚志, 須貝 俊彦

    日本地理学会発表要旨集 2019年

    詳細を見る 詳細を閉じる

    地球表層の物質循環を理解する上では,河川流域における諸地形形成プロセスの相互作用と,その長期的な変化を明らかにし,流域全体の土砂収支を総合的に評価する必要がある.長期的な気候変動に対する河川の応答を評価するためには,河成段丘面の高度と形成年代を明らかにし,河床縦断面形の変化史を明らかにすることが重要であり,これまでに多くの研究が蓄積されている.しかし,氷期の堆積段丘の形成メカニズムや,連続的な外部条件の変化に対する河川の不連続的な河床高度変化の原因に関しては,不明な点が多い.これらの問題を明らかにするために,本研究では,関東山地を流れる多摩川・荒川の上流域において,河成段丘面および構成層の本流性―支流性を識別し,テフロクロノロジーに基づいてこれらの編年を行う.その上で,最終間氷期以降における,両河川の上流河谷の支流合流点付近における河成段丘発達過程(本流―支流の堆積・侵食史),および本流河床高度の変化史を復元する.<br>多摩川上流河谷には,最終氷期の堆積段丘面である青柳面と,晩氷期~完新世の侵食段丘面群である拝島面,天ヶ瀬面が発達する(高木,1990).青柳面は,関東ローム層に覆われ,本流河谷横断方向に傾斜する.その末端部は段丘崖によって切られ,低位の侵食段丘面と隔てられている.青柳面構成層は,最大で約70 mの層厚を持ち,上部は支流性角礫層,下部は支流性の円礫層と指交した本流性円礫層から構成される.上部支流性角礫層中には,箱根東京軽石層(Hk-TP)が,青柳面構成層下部には,御岳潟町テフラ(On-Kt)が挟在する(Takahashi and Sugai, 2018).<br>荒川上流河谷には,最終氷期の堆積段丘面である影森面と,晩氷期~完新世の侵食段丘面群である大野原面が分布する(吉永・宮寺,1986).影森面は,本流河谷横断方向に概ね水平なKM(m)面と,本流河谷横断方向に緩傾斜したKM(t)面に細分される.KM(t)面は,影森面構成層上部を構成し,ATを挟む支流性角礫層によって構成される.KM(m)面は,立川ローム上部ガラス質テフラ(UG)に覆われる本流性円礫層によって構成される.影森面構成層下部には,御岳第1テフラ(On-Pm1)が挟在する.<br>以上のことから,以下の本流河床変動史が復元される.多摩川は少なくとも95 ka以前から,荒川は少なくとも100 ka以前から河床上昇を開始した.河床上昇は,多摩川では少なくとも66 ka以前に,荒川では少なくとも30 ka以前に河床上昇は概ね終了した.その後,17 ka頃までは概ね河床高度が安定していた.その後,わずかに掘り込んだのち,晩氷期~完新世初頭には河床高度が概ね安定し,側方侵食が卓越した.その後,5 ka以降は下刻に転じた.<br>多摩川・荒川上流河谷では共通して,海洋酸素同位体ステージ(MIS)5.3以前に本流河床上昇が開始し,本―支流性堆積物が指交しながら河谷が埋積された.本流河床上昇はMIS 4以前に終了し,その後,MIS 2までは,合流点付近に支流性堆積物が滞留し,支流性扇状地が発達した.その後,晩氷期~完新世初頭には,支流性扇状地の末端部が本流によって侵食され,支流性堆積物が再移動した.<br>多摩川上流域の青柳面,および荒川上流域のKM(t)面は,本流河谷横断方向に傾斜する.またその段丘面は,支流性堆積物によって地形面が構成され,ローム層に覆われる.これらのことから,青柳面およびKM(t)面は,最終氷期の支流性扇状地を由来とするtoe-cut terrace(Larson et al., 2015)である.その末端部は,晩氷期~完新世初頭の本流の側方侵食を受けて失われたと考えられる.<br>多摩川と荒川の河床高度は,MIS 4~MIS 2と晩氷期~完新世初頭の2時期で,概ね安定的であったと推測される.これは,支流性堆積物の滞留・再移動によって,本流の掃流力に見合った量の土砂が供給されたためであると考えられる.本流河床高度が安定し,側方侵食が活発になったために,それぞれの時期に多摩川・荒川流域では,幅の広い侵食段丘面群が形成された.上流河谷内の合流点付近に発達する支流性扇状地は,支流域から本流への土砂供給量の変動を緩衝する役割を持ち,本流の動的平衡状態を達成・維持し,河成段丘面の形成に寄与することが示唆される.

  36. 日本列島における海成段丘と海底段丘の分布の比較

    小松哲也, 日浦祐樹, 高橋尚志, 舟津太郎, 村木昌弘, 木森大我, 須貝俊彦

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2019年

  37. 多摩川・荒川上流河谷における,最終氷期以降の支流の土砂供給様式の時空間変化

    高橋尚志, 須貝俊彦

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2019年

  38. 氷河性海水準変動と海底地形を踏まえた伊豆諸島の火山活動史構築にむけて

    高橋尚志, 青木かおり, 村田昌則, 鈴木毅彦

    日本第四紀学会講演要旨集 2019年

  39. 2018年7月豪雨による斜面災害発生場の地形学的検討(速報)

    須貝俊彦, 佐々木夏来, 高橋尚志, 村木昌弘, 木森大我, 舟津太郎

    地形 2019年

  40. 日本列島の大陸棚に発達する海底段丘の分布・特徴

    小松 哲也, 日浦 祐樹, 泉田 温人, 高橋 尚志, 舟津 太郎, 村木 昌弘, 宝蔵 蓮也, 須貝 俊彦

    日本地質学会学術大会講演要旨 2018年

    詳細を見る 詳細を閉じる

    【災害のためプログラム中止】 平成30年北海道胆振東部地震により学術大会のプログラムが大幅に中止となりました.中止となったプログラムの講演要旨については,著者のプライオリティ保護の見地からJ-STAGEに公開し,引用可能とします.ただし,学術大会においては専門家による議論には供されていませんので「災害のためプログラム中止」との文言を付記します.(日本地質学会行事委員会)

  41. 平成29年7月九州北部豪雨被災地における過去の土砂移動イベント復元の地形学的試み

    宝蔵 蓮也, 高橋 尚志, 須貝 俊彦

    日本地理学会発表要旨集 2018年

    詳細を見る 詳細を閉じる

    1)はじめに<br> 平成 29年 7月に九州北部豪雨では,福岡県朝倉市の筑後川右岸支流域において,多くの土石流・土砂流や斜面崩壊による大規模な地形変化が引き起こされた.本災害により出現した露頭からは,過去の土石流・土砂流イベントの痕跡が見出されており,今回のイベントと同様のイベントが過去にも繰り返し生じてきたことが示唆されている(矢野ほか,2017).今回のようなイベントが過去にも生じてきたのか,生じたならばどのようなイベントだったのか,という観点に立った地形発達史的研究を進めることは,地形学が独自に防災・減災に貢献する点において重要である.また,イベントが流域の地形発達においてどのように寄与してきたかを明らかにすることは,山地河川の土砂移動・地形発達プロセスを理解する上で重要である.本地域周辺における地形発達史は黒田・黒木(2004)の研究があるが,テフラによる年代指標に乏しいほか,段丘面の本-支流性についての言及はなされていない.本発表では,筑後川支流域における現地調査で見出した,過去のイベントの痕跡と考えられる地形および露頭について報告し,本地域の地形発達史について議論する.<br><br>2)研究手法<br> 豪雨による地形改変が顕著だった筑後川支流5河川(奈良ヶ谷川,北川,寒水川,白木谷川,赤谷川)において2017年8月以降に現地調査を行い,露頭観察,新旧イベント堆積物や火山灰等の年代試料の採取を行なった.火山灰はSEM-EDSにより火山ガラスの主成分化学組成を測定し対比した.<br><br>3)結果および考察<br> 北川の中流では,2017年豪雨イベントにより形成された段丘Ⅰを含めて4段の段丘地形が発達する(Fig.1).これらの段丘は,花崗閃緑岩の基盤の上に淘汰の悪い礫層が載り,表層部は土壌化している.このことから,2017年よりも古い時代に少なくとも3回,2017年と同様の地形変化イベントが繰り返されてきたことが示唆される.なお,各段丘面間の比高は1~2 m程度であり,段丘Ⅲ,Ⅳ上には住居が立地していた.今後,木片や火山灰を用いて各段丘面の形成年代を明らかにし,イベントの発生間隔を考察していく予定である.<br> 白木谷川の下流では,甘木Ⅰ面を切る侵食段丘面を構成する地層が観察された(Fig.2).標高47 mの高さまで厚さ2 m以上の安山岩礫主体の円礫層が見出され,その上部には厚さ20 cmの火山灰混じりの砂層が挟在し,火山灰層の上には,花崗閃緑岩・片岩・凝灰岩の角礫~亜円礫により構成される砂礫層が載る.火山灰はbw型火山ガラスを多く含み,この火山ガラスはATが主体であるが,一部はAso-4に対比された.Aso-4は筑後川上流の火砕流台地が起源であると考えられ,ATの降下とほぼ同時期にAso-4が混入し,フラッドロームとして堆積したと推測される.本・支流域の地質および礫の円磨度を踏まえると,AT層より下位の円礫層は筑後川本流が運搬し,上位の角礫層は支流が運搬したと推定される.したがって,ATの降下期以降に,白木谷川下流域では,本流の段丘を掘り込んで支流の段丘面が発達したと考えられる.今後,段丘面や段丘構成層の本-支流性の識別と編年を進め,本地域の地形発達を詳細に議論する予定である.<br><br>引用文献<br>黒田圭介・黒木貴一(2004)日本地理学会発表要旨集,65,81.<br>矢野健二・矢田純・山本茂雄・細矢卓志(2017)日本応用地質学会九州支部HP,2017.7.31掲載,2018.1.15最終閲覧.

  42. 荒川上流域における最終氷期以降の支流の河床勾配および本流への土砂供給様式の変化

    高橋 尚志, 須貝 俊彦

    日本地理学会発表要旨集 2018年

    詳細を見る 詳細を閉じる

    長期的な山地からの土砂流出過程を解明するためには,河川上流域における様々な地形形成プロセスの相互作用,およびこれらの気候変動に対する応答性を評価する必要がある.本―支流合流点付近の地形発達過程を復元することで,支流から本流への土砂供給様式とその時間的変化を議論することが可能である.Takahashi and Sugai (in press)は,多摩川上流域の本―支流合流点付近の地形発達史を復元し,最終氷期の本流の河床上昇によって,合流点の高度が上昇したことで,一部の支流が土石流渓流から掃流支流(島津, 1990)へと変化したことを指摘した.これは,間氷期と比較して氷期には山地流域全体で土石流による本流への土砂供給が相対的に不活発になった可能性を示唆する.今後,気候変動に伴う本流の河床上昇・低下に対して,様々な勾配をもつ支流がどのように応答して河床勾配や土砂供給様式を変化させたのかを検討し,山地からの土砂流出過程を一般化する必要がある.本報告では,堆積段丘の発達する関東地方,荒川上流域(秩父盆地とそれより上流域)を対象に,河成段丘面の地形計測,支流の集水域の地形解析,ならびに段丘堆積物の露頭観察を行い,最終氷期以降の支流の河床勾配変化および荒川本流への土砂供給様式の変化について議論する.<br>荒川は関東山地に端を発し,秩父盆地,狭窄部を経て,関東平野へと流出する.本報告では,荒川上流域のうち,三峰口より上流を「源流域」,三峰口~皆野区間を「秩父盆地」と定義する.源流域は秩父帯・四万十帯の付加体堆積岩類が,秩父盆地は第三紀の堆積岩類が基盤を構成する.荒川流域には,後期更新世の河成段丘面群が顕著に発達し,特に秩父盆地には,最終氷期の堆積段丘面である影森面と,晩氷期頃の侵食段丘面の大野原面が発達する(吉永・宮寺,1986).影森面は,支流性堆積物と一部指交する20~30 mの厚い砂礫層から構成される.秩父盆地最上流部の三峰口付近で影森面は大野原面へ収斂し,源流域には大野原面のみが分布する.<br>秩父盆地では,集水域起伏比600~50‰程度,現河床勾配500~10‰程度の支流が合流する.秩父盆地最上流部の三峰口付近では,厚さ30 m以上の影森面構成層が観察される.三峰口左岸では,小支流が約120‰程度で合流する.この小支流の合流点付近の影森面は支流流下方向に約50‰で傾下する.影森面構成層最上部7 mは,最大礫径15 cm程度の支流性角礫層から構成される.<br>源流域では,集水域起伏比960~200‰,河床勾配800~20‰程度の支流が合流する.大野原面の背後は,緩斜面となっている.ただし,緩斜面の末端は大野原面形成時の河川の側方侵食によって小崖を成しており,大野原面にスムーズに連続してはいない.これらの緩斜面は支流性または斜面の角礫層から構成され,基質は明褐色ローム質土壌から成ることから,最終氷期の支流・斜面性の堆積地形であると考えられる.これらの緩斜面のうち,支流性と考えられる地形面は,現在の支流によって開析され,支流流下方向に300~100‰程度で傾下する.この勾配は最終氷期の支流の河床勾配を示すと考えられ,それぞれの支流現河床の勾配よりも概ね緩い.<br>秩父盆地最上流部の影森面構成層上部および源流域の緩斜面は,最終氷期に支流・斜面が形成したものと考えられる.最終氷期の荒川本流の河床上昇後,本流河谷内の支流合流点付近には支流・斜面の土砂が滞留し,これらの堆積地形が発達したと考えられる.また,これらの地形は晩氷期頃の本流の側方侵食によって段丘化し,滞留していた支流・斜面の土砂が再移動した.支流・斜面の堆積物が,最終氷期に滞留し,晩氷期に再移動したことで,それぞれの時期の本流の流量に見合った量の土砂が本流に取り込まれ,本流の平衡状態が継続し,影森面および大野原面が形成されたものと推測される.<br>荒川源流域および秩父盆地最上流域における,最終氷期の支流河床勾配は現在のそれよりも小さい.このことは,現在と比較して最終氷期には,支流合流点の高度がより高い位置にあり,支流の河床勾配が小さかったことを示す.最終間氷期に現在と同様の深い河谷が形成されていたとするならば,最終氷期の本流の河床上昇によって,支流合流点高度が上昇し,支流の河床勾配が減少したと推測される.源流域の支流は,最終氷期中も土石流停止勾配以上の勾配を保ったことにより,本流へと土石流によって土砂を運搬することが可能であった.一方で,秩父盆地の一部の支流は,最終氷期に土石流停止勾配を下回り,間氷期と比較して土石流による本流への土砂供給が不活発であったと考えられる.これは,秩父盆地の支流の多くが,源流域の支流と比較して集水域起伏比が小さいこと,ならびに集水域の基盤が第三紀層によって構成されることによるものと考えられる.

  43. 第四紀後期の烏川上・中流域の段丘発達と地殻変動

    岡 岳宏, 高橋 尚志, 須貝 俊彦

    日本地理学会発表要旨集 2018年

    詳細を見る 詳細を閉じる

    烏川は,群馬・長野県境の鼻曲山に端を発し,おおむね南東方向に流れる全長約62 kmの河川である.平野部で碓氷川・鏑川・神流川の3河川と合流し,利根川へと合流する.本発表では,湯殿山地すべり付近から碓氷川合流点までを中流域とし,それより上(下)流を上(下)流域と定義する.関東山地北縁部では,南から順に鏑川,碓氷川,九十九川,烏川の諸河川が東流し,これらの河川流路に沿って数段の段丘面が発達している.新井(1962)はテフロクロノロジーに基づく段丘面区分の結果から,烏川では,他の河川段丘に比べ段丘礫層の堆積及び段丘面の発達が悪いことを述べており,第四紀後期に地域的な性質をもつ地盤運動が顕著であることが要因であることを指摘したものの,烏川における詳細な段丘発達についての議論はほとんど行われていない.<br>湯殿山地すべり内またはその周辺では,過去約3万年間にすくなくとも6回の液状化履歴が確認されており,深谷断層系北部セグメントとの密接に関連している可能性が指摘されている(高浜ほか,2001).また岡・須貝(2017)では,烏川中流域の段丘面の発達が悪いことについて,深谷断層の下盤側に位置している環境が要因の一つである可能性を指摘した.筆者らは,深谷断層の活動や湯殿山地すべりなどの地域的地殻変動が,烏川上・中流域の段丘発達史に与える影響について検討を行った.<br><br>対象地域において空中写真判読と現地調査による地形面区分を行い,上流域・中流域において,それぞれ地形面が高い順にU1,U2,U3,U'面・M1,M2,M3,Spf面に区分した(図1).U1面は,河床からの比高が約60 mであり,分布は上流側の一部に限られる.U2面は,河床からの比高が約15 mであり,U3面との境界は,比高5-10 mの段丘崖で隔てられる.U'面は,空中写真判読では段丘と認定できるものの,本流方向に向かって大きな傾斜を持つ地形面である.M1面は,烏川の右岸側に存在し,湯殿山地すべり付近に存在する面(M1a),秋間丘陵の北東側に接して北西-南東方向に伸び,烏川に向かって傾斜している面(M1b),秋間丘陵東部に存在する面(M1c)とさらに3つに区分できる.Spf面は,45 ka(下司ほか,2011)に榛名山から噴出した白川火砕流が堆積し形成されたものであり,烏川中流域の右岸側に発達しているものの,上流域ではSpf面に対比される面は確認できない.M2面は,現河床との比高が約10 mであり,M3面とは比高3-5 mの段丘崖で隔てられる.M3面は,現河床との比高が小さく大規模洪水時にはフラッドロームが堆積しうる環境である可能性がある.<br>現地調査の結果,U2面はAs-YP降下前に段丘化した可能性が高いことが明らかになった.M2面は岡・須貝(2017)により,As-BP降下以前に段丘化した可能性が高いことが示唆されており、U2面・M2面はともに最終氷期後半に形成されたことが明らかになったが,その形成年代は異なっている.これは以下の理由が考えられる.M2面は柳田(1991)が示す下流部での下刻の波及によって段丘化したと考えられる.しかしこの下刻の波及は湯殿山地すべり付近で止まった可能性が推測される.烏川は,湯殿山地すべり末端部の押し出し・圧縮によりせまい流路を屈曲して流下しており,この特異的な地形が下刻の波及が止まった要因になっていると考えられる.そしてAs-YP降下期以降に上流域において,流量が増えたことで上流域においても下刻が進み,段丘化が進んだ可能性が考えられる.すなわち,M2面形成時期には,現河床で確認できるような湯殿山地すべり付近での河川縦断面系の遷急点(図2)はすでに存在していたと推測される.これは,AT降下前に湯殿山地すべりが最初に活動したとされていることと調和的である.また上流域においてSpfによるダム湖形成の痕跡は見つかっておらず、上流域での段丘地形発達にSpfは大きな影響は与えなかった可能性が高いと考えられる.<br><br>参考文献:新井房夫 1962. 群馬大学紀要, 自然科学編 10(4),1-79.下司・大石 2011. 地質調査報告書,62,177-183.岡・須貝 2017. 日本地理学会要旨集(92),p152.高浜・大塚 2001. 地球科学,55,217-226.柳田 誠 1991. 駒沢地理,27,1-75.

  44. 緊急シンポジウム「西日本豪雨災害」

    日本地理学会 災害対応本部

    日本地理学会発表要旨集 2018年

    詳細を見る 詳細を閉じる

    1.日本地理学会災害対応本部の概要<br> 日本地理学会「災害対応本部」は、2011年の東日本大震災への対応以来、大規模な災害が発生した際、災害対応委員会および災害対応担当の理事、理事会が緊急に連絡を取り合い設置する手順を定めている。<br> 「災害対応本部」の業務は、1)該当の災害に関連する情報を収集・整理し、地理学会全体として発信すべき情報をまとめる、2)まとめられた情報を、災害担当理事および理事長に伝え、「日本地理学会」の名前で、HP ほかで公表する、3)マスコミ、自治体、一般からの問い合わせ、また他の学会などから合同調査などの依頼等があった場合は、「災害対応本部」で対応する、などであり、これまでにも2016年4月の熊本地震の際に災害対応本部を設置し、情報の発信を行った。<br><br>2.平成30年7月豪雨災害への対応<br> 2018年6月 28 日~7月8日にかけて、台風7号や梅雨前線の影響により西日本を中心に全国的に広い範囲で記録的な大雨となり、各地で甚大な被害が発生し、気象庁は、この豪雨について「平成 30 年7 月豪雨」と命名した。<br> 日本地理学会災害対応委員会は7月7日頃から情報の収集を開始し、7月8日には「平成30年7月豪雨(西日本豪雨)」のサイトを立ち上げた。さらに、災害の拡大を受け、7月10日に「災害対応本部」の立ち上げを理事会に要請し、7月11日に設置された。<br><br>3. 主な活動<br> 2018年7月16日現在、災害対応本部は水害(責任者・海津委員)および土砂災害(責任者・須貝委員)とともに、広島県、岡山県、愛媛県等の拠点委員を中心に、情報の収集と集約、災害の状況のリスト作成、「地理院地図」などを利用したマッピングをすすめ、随時「災害対応のページ」で公開している。<br> また、防災学術連携体に対しても情報提供を行い、7月16日の防災学術連携体「平成30年7月豪雨緊急集会」(建築会館)では、日本地理学会より海津正倫会員による報告(倉敷市小田川流域の地形と水害)を行った。<br> 広島県では広島大学の後藤会員と熊原会員、岡山県は岡山大学の松多会員、愛媛県は愛媛大学の川瀬会員と石黒会員が中心となり、情報の収集・集約をすすめている。このほか九州地区、四国地区の拠点委員はじめ、全国の災害対応委員・拠点委員が協力して地理学会としての情報の発信を行っている。<br><br>4.秋季大会緊急シンポジウム<br> 報告は下記の6件程度を予定しており、その他ポスターセッションも予定している。<br>・海津正倫委員(水害)<br>・須貝俊彦委員(土砂)<br>・石黒聡士委員(愛媛)<br>・後藤秀昭会員(広島)<br>・松多信尚委員(岡山)<br>・松原 宏本部長(人文分野)

  45. 平成29年7月九州北部豪雨における土砂移動プロセスの特徴と地形発達史的考察(速報)

    宝蔵蓮也, 須貝俊彦, 高橋尚志, 佐々木夏来, 泉田温人

    地形 2018年

  46. アナグリフ地形判読にもとづいた日本列島の海底段丘分布図

    小松哲也, 泉田温人, 高橋尚志, 舟津太郎, 村木昌弘, 宝蔵蓮也, 野村勝弘, 丹羽正和, 須貝俊彦

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2018年

  47. 関東地方,荒川支流・横瀬川合流点付近における最終間氷期以降の河谷埋積過程

    高橋尚志, 須貝俊彦

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2018年

  48. 最終氷期以降の支流の土砂供給プロセス変化に基づく,荒川上流河谷の区分

    高橋尚志, 須貝俊彦

    日本第四紀学会講演要旨集 2018年

  49. 最終間氷期以降における多摩川の河床縦断面形変化に関する再検討

    高橋 尚志, 須貝 俊彦

    日本地理学会発表要旨集 2017年

    詳細を見る 詳細を閉じる

    Dury(1959)や貝塚(1969)は,氷期に急勾配化,間氷期に緩勾配化する河床縦断面モデルを提案し,河成段丘形成において①海水準変動および②気候変動に伴う流量-土砂量比の変化が重要な要因であることを示し,これを支持する結果が日本列島の多くの河川において報告されている(例えば柳田,1981;吉永・宮寺,1986).ただし,間氷期から氷期への移行過程の詳細はモデル化されていない.中・下流域では,海水準の低下に応答して形成された侵食段丘面を基に,最終氷期中の河床縦断面形を比較的容易に復元できる.一方,上流域の最終氷期における河床高度の変化に関しては中・下流域よりも時間分解能が低いことが多く,河川流域全体における最終氷期中の河床縦断面形変化に関しては不明な点が多い. 多摩川中・下流域では,Kaizuka et al.(1977)が後期更新世の海水準変動と河成段丘発達過程の関係を解明し,それに続いて,立川(Tc)の細分(山崎, 1978;久保・小山, 2010など)や,沖積層に埋没する段丘面への連続性が検討されている(松田,1973;Kubo, 2002など).一方,上流域では,高木(1990)が河成段丘発達史を復元したが,河床変動史に関しては不明な点が残されている.Takahashi and Sugai(投稿中)は,多摩川上流域の堆積段丘構成層を支流性と本流性に識別し,高木(1990)と異なる最終氷期以降の河床変動史を解釈した.この新しい解釈を踏まえて,本報告では多摩川流域全体の最終間氷期以降の河床縦断面形変化史について再検討する. 高木(1990)は,多摩川上流域では(1)MIS 5.3から箱根東京軽石(Hk-TP;65 ka)降下期まで本流河谷が最大で約70 mの厚さで埋積されて青柳(Ao)面が形成され,(2)Ao面は現河床に対して上流に向かって発散し,Tc面や拝島(Hi)面は上流に向かってAo面に収斂すると解釈した. これに対して,Takahashi and Sugai(投稿中)は,Ao面を構成する本流性堆積物の上限高度を基に河床高度を復元し,青梅市中心部よりも上流に分布するAo面およびTc2面は,最終氷期の支流性扇状地がLGM後の本流の側方侵食により段丘化した地形(Toe-cut terrace; Larson et al., 2015)であり,本流の河床高度を示さないことを示し,(1)本流の河床上昇はHk-TP降下期以前に概ね終了し,河床上昇量は40 m程度以下であること,(2)最終氷期中の河床縦断面形は現河床に対して上流に向かって発散せず,MIS 4~2の河床高度は安定していたことを指摘した. 多摩川上流域のAo面を構成する本流性堆積物の上限高度を連ねた縦断面(PTMD;Profile of top of mainstream deposits)は,MIS 4~2の本流の河床縦断面を示すと考えられる.青梅より下流に分布するTc2およびTc3面は,PTMDに収斂する(図1).Hi面以下の晩氷期以降に形成された侵食段丘面群の各縦断面形はPTMDと概ね平行に下流へ連続する. 中・下流域では,上流河谷の埋積の開始以前(~MIS 5.3)には武蔵野(M)1面が,上流河谷の埋積期(MIS 5.3~4)にはM2およびM3面がそれぞれ形成された.上流域で河床高度が安定していたMIS 4~2には,中・下流域では側方侵食が活発化しTc1~3面が形成された. このように,最終間氷期以降,上流の河床安定期に対応して,中・下流域において比較的幅の広い段丘面が形成されたと考えられる.また,PTMDにTc1~3面が収斂することは,LGMに向かう海水準の低下に縦断面が応答し,河口付近から下刻が上流へと波及し,Tc1~3面が形成されたこと(野上, 1981; 柳田, 2009)と調和的である.最終氷期に本流の河床高度が安定していた間,支流性堆積物が河谷内に支流性小扇状地が発達した原因として,小岩(2005)が指摘するように短周期の気候変動(D-O振動)に支流や斜面が応答して地形を形成した可能性が推測されるが,この点に関しては,今後の検討課題である.

  50. 関東地方,荒川狭窄部における最終氷期の本流河床高度に関する再検討

    高橋尚志, 須貝俊彦

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2017年

  51. 関東山地における後期更新世テフラ層序とその河川地形学上の意義

    高橋尚志, 須貝俊彦

    日本第四紀学会講演要旨集 2017年

  52. 第四紀の海水準変動・養老断層運動・御嶽噴火と濃尾平野の埋積プロセス-とくに御嶽白尾火山灰層との関連に注目して-

    須貝俊彦, 水野清秀, 高橋尚志, 佐々木夏来

    日本第四紀学会講演要旨集 2017年

  53. アナグリフ地形判読にもとづく日本列島の大陸棚の海底地形学図の作成

    小松哲也, 泉田温人, 岡岳宏, 高橋尚志, 野村勝弘, 安江健一, 須貝俊彦

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2017年

  54. 多摩川上流域における最終氷期以降の河床変動に関する再検討

    高橋 尚志, 須貝 俊彦

    日本地理学会発表要旨集 2016年

    詳細を見る 詳細を閉じる

    はじめに<br> 多摩川上流域に分布する河成段丘面は高木(1990)により形成過程が検討されているが,背後の緩斜面も含めて河成段丘と認定していることなどから,正確な本流位置を推定するためには,段丘構成堆積物のより詳細な検討が必要である.本報告では,多摩川上流域に分布する青柳面の露頭観察・地形測量,テフラの火山ガラスの主成分化学組成分析を行い,最終氷期以降の多摩川本流の河床高度変化について再検討を行う.<br><br>研究対象地域<br>多摩川は関東山地に端を発し,東京湾に注ぐ河川である.青梅より上流域には最終氷期以降に形成された河成段丘面群が峡谷に沿って分布する.本報告では,多摩川本流の小河内ダム~青梅市街地の区間に発達する河成段丘面群を対象とする.対象地域の基盤の岩質は,四万十帯および秩父帯小仏層群に属する付加体堆積岩類である.<br>高木(1990)は本地域の河成段丘面を上位から,青柳面,拝島面,天ヶ瀬面,千ヶ瀬面,低位段丘面に区分した.また,青柳面が厚い礫層を伴う堆積段丘面であり,その本流性礫層上部に箱根東京軽石(Hk-TP;65 ka;青木ほか, 2008)が挟在することから,海洋酸素同位体ステージ(以下,MIS)5.5に形成された河谷がMIS4頃までの期間に埋積されたと考えられている(高木, 1990).<br><br>青柳面構成層の記載<br>青柳面構成層は,多摩川河谷の幾つかの地点で観察され,軍畑よりも上流では厚い支流性角礫層に覆われている.①奥多摩町白丸では,標高326m付近を境に最大礫径約40cmの亜円~円礫層が堆積し,その直上を20m以上の厚さを持つ淘汰の悪い角~亜角礫層に覆う.この角礫層中には標高341mに黄褐色軽石が認められ,この火山ガラスの主成分化学組成はHk-TPとほぼ一致する.②奥多摩町川井では,標高271mに最大礫径約40cmの亜円~円礫層が認められ,20m以上の厚さの亜角礫層に覆われる.③青梅市沢井では円礫層は未確認で,複数の逆級化ユニットで構成される厚さ4m以上の角礫層が観察された.これを覆う角礫混じりローム層の下部には赤褐色軽石が散在している.この赤褐色軽石の火山ガラスの主成分化学組成は,八ヶ岳新期第4テフラ(Yt-Pm4;32ka;大石,2015)に対比される可能性が高い北本軽石(KMP;須貝ほか,2007)と一致する.<br><br>最終氷期中の河床高度と支流からの土砂供給<br>青柳面構成層中の円礫層は多摩川本流の堆積物と考えられるので,その上限高度は堆積段丘面形成当時の本流の河床高度を示す可能性が高い.この河床高度は,高木(1990)の示したそれよりも,①白丸で約35m,②川井で約20m低い.それぞれの青柳面構成層の露頭で得られた本流性の円礫層の高度をもとに河床縦断面形を描くと,高木(1990)の青柳面の縦断面形と異なり,現河床面と概ね平行な縦断面形を成す. 今回得られた青柳面の縦断面形から求められる,多摩川の最終氷期以降の平均下刻速度は2.8~4m/kyrである.この値は,他の関東山地の河川の上流域における平均下刻速度,すなわち,相模川(3.5~5m/kyr;相模原市地形地質調査会,1986),鏑川(3~5m/kyr;須貝,1996)と概ね一致する. また,高木(1990)はHk-TPが青柳面構成層の本流性礫層上部から見出されることから,本流河谷の埋積はHk-TP降下時頃まで継続していたと考えた.しかし,①白丸においてHk-TPが本流性円礫層を覆う支流性角礫層中から見出されたことから,本流の河床上昇はMIS4以前に概ね終了し,Hk-TP降下時の多摩川上流域は,支流および谷壁からの堆積物が累積する環境であった可能性がある.また,③沢井ではKMPが支流性角礫層を覆う角礫混じりローム層中から見出されたことから,最終氷期中の支流および谷壁からの土砂の供給は,MIS3頃まで継続していたと推測される.<br><br>参考文献<br>青木ほか(2008)第四紀研究,47(6),391-407;大石(2015)火山,60(4),477-481;相模原市地形・地質調査会(1986)相模原の地形・地質調査報告書(第3報),96p;須貝(1996)日本第四紀学会講演要旨集,26,102-103;須貝ほか(2007)地学雑,116,3/4,394-409;高木(1990)第四紀研究,28(5),399-411.

  55. 多摩川上流域における最終氷期以降の河成段丘形成過程と支流の地形特性との関係

    高橋尚志, 須貝俊彦

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2016年

  56. Estimation of the paleo-river transportation processes from the size and roundness of terrace gravels in the Sagami River, central Japan

    Takayuki Takahashi, Masaaki Shirai

    XIX INQUA Congress 2015年

  57. Influences of dam reservoir on sand grain producing and transport processes estimated from gravel and sand grain roundness of Tenryu River, central Japan

    Takako Utsugawa, Masaaki Shirai, Ryo Hayashizaki, Takayuki Takahashi, Eri Nakajima

    XIX INQUA Congress 2015年

  58. 河成段丘構成層の礫径や円磨度から推定される,多摩川および相模川におけるMIS5.1とMIS3~2の河川運搬プロセス

    高橋尚志, 白井正明

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2015年

  59. 静岡県安倍川上流部における大谷崩れの崩壊と赤水の滝の形成

    白井正明, 渡辺万葉, 宇津川喬子, 林崎涼, 高橋尚志, 小尾亮, 加藤裕真

    日本地球惑星科学連合大会予稿集(Web) 2015年

  60. 礫の大きさと円磨度からみた氷期・間氷期の河成段丘構成層の違い-多摩川の河成段丘を例にして-

    高橋尚志, 白井正明

    日本第四紀学会講演要旨集 2014年

  61. 房総半島一宮川流域における地形分類

    目代邦康, 七山太, 高橋尚志, 大井信三

    地形 2013年

  62. 九十九里海岸一宮川河口の変遷と洪水イベントとの関係

    七山 太, 目代 邦康, 高橋 尚志, 大井 信三

    日本地質学会学術大会講演要旨 2012年

︎全件表示 ︎最初の5件までを表示

共同研究・競争的資金等の研究課題 10

  1. 能登半島における地震と豪雨に伴う地形変化の追跡とハザード履歴,地形発達史の解明

    高橋尚志, 松多信尚, 青木賢人, 早川裕一, 小倉拓郎, 岩佐佳哉, 千葉崇, 飯塚浩太郎, 松岡憲知

    2025年6月 ~ 2026年3月

  2. 河川上流域における支流の土砂供給様式の長期的変化過程の解明

    高橋 尚志

    2021年4月1日 ~ 2025年3月31日

    詳細を見る 詳細を閉じる

    本研究では,段丘地形発達史の復元と,地理情報システム(GIS)ソフトを用いた数値地形解析を組み合わせ,最終間氷期以降の東北~中部日本の河川上流域における,支流から本流への土砂供給様式の変化を数千~数万年スケールで復元し,支流の土砂供給様式の変化過程と支流集水域の地形・地質条件の関係を検討することを目的としている.本研究が対象とする段丘地形や段丘堆積物を編年する上では,段丘地形を覆う,もしくは段丘堆積物に挟まる火山灰(テフラ)層の対比・同定が重要となる.本研究で対象とする堆積物中に挟まれるテフラ層は複数枚あり,詳細な編年のためには,これらを識別することが必要不可欠である.このことから,後期更新世に御岳火山を給源として噴出したテフラの模式試料を入手して,顕微鏡観察や室内分析による鉱物組成や屈折率,主成分化学組成の測定を進めた.段丘堆積物から見いだされた未知テフラ試料は,先行研究および上記の模式試料の分析結果を参考に対比を試み,段丘堆積物の編年を進めていく予定である.また,関東および東北地方の河川流域を対象として,合流点付近における支流性の地形・堆積物の形成に関係していると考えられる,支流集水域の地形解析を実施し,集水域起伏や流域面積などを算出した.今後,調査成果を合流点付近における地形・地質断面図に整理するとともに,支流集水域の解析結果と組み合わせて検討し,支流集水域の地形・地質条件と合流点付近の段丘発達史の関係について検討する予定である.

  3. 神奈川県柏尾川流域における地下文化遺産を活用した災害リスクの評価

    小倉拓郎・高橋尚志・田村裕彦・佐藤昌人・小口千明

    2024年6月 ~ 2025年3月

  4. 迫川の沖積低地の地形発達および伊豆沼・内沼の成立過程に関する研究

    高橋尚志, 杉浦綸文, 鈴木比奈子, 堀 和明, 遠田晋次

    2024年6月 ~ 2025年3月

  5. 令和6年能登半島地震後の海岸隆起地形の特徴と地形変化

    2024年4月 ~ 2025年3月

  6. 画像解析を用いた多量・高精度の砕屑物形状の抽出とそれに基づく給源・運搬過程の解明

    石村 大輔

    2021年4月1日 ~ 2024年3月31日

    詳細を見る 詳細を閉じる

    2021年度は、基礎研究として河川の流下方向と礫種毎による円磨度の変化を明らかにし、応用研究として洪水・津波堆積物の円磨度に基づく砕屑物の運搬過程の推定を行った。基礎研究として行った河川は、相模川、四万十川、常願寺川、天竜川である。これらの結果から得られた河川の流下方向における円磨度の傾向としては、最上流部で急激に円磨が進み、ほとんどの河川区間では円磨度の傾向は漸増傾向を示す。一方、河口部や近くの海岸では、円磨度が増加し、明らかに河川とは異なる傾向を示す。これは河川と海岸の礫の生成・供給過程と円磨過程の違いを反映していると考えられる。また、礫種毎に円磨度が異なることもわかった。いずれの分析結果からも、同一地点の試料では、粒径が大きくなるほど円磨度が大きくなる傾向が得られた。 さらに、福徳岡ノ場2021年噴火が発生し、大量の軽石粒子が海洋へ放出されたため、それらを対象にした円磨度変化も明らかにした。その結果、軽石は海洋へ放出されてから急速に円磨度が増加し、その後は大きく変化しないことがわかった。また、同時期に漂着した軽石でも海岸によって円磨度が若干異なることから、漂着した海岸の状態によっても砕屑物形状に違いが現れることが示唆される。 応用研究の洪水・津波堆積物では、いずれも礫を対象に円磨度計測を行い、給源粒子の混合比を明らかにした。その結果、津波堆積物に関しては、海岸を構成する礫と調査地点と海岸の間の丘陵にある礫が津波堆積物の中に含まれていることがわかり、過去の津波の経路を復元することができた。洪水堆積物に関しては、河床礫と破堤堆積物を比較して、破堤堆積物中には河床を起源とする礫とそれ以外の堤防を構成する礫(人工物も含む)が含まれることが明らかとなった。いずれの研究においても、礫の円磨度情報がイベント堆積物の運搬経路や起源を知る上で有用であることがわかってきた。

  7. 栗駒火山山麓地域における更新世末期以降の火山噴出物層序および地形発達史の解明

    高橋尚志, 市川玲輝, 諏訪貴一, 遠田晋次

    2023年6月 ~ 2024年3月

  8. 栗駒火山における完新世の水蒸気噴火堆積物の層序と分布

    高橋尚志・市川玲輝・諏訪貴一・遠田晋次

    2022年4月 ~ 2023年3月

  9. 支流性段丘面の発達過程にもとづく山地河川における長期的な土砂移動過程の復元

    高橋尚志

    2020年4月 ~ 2022年3月

  10. 栗駒火山北麓における完新世の地すべり地形発達史に関する研究

    高橋尚志・市川玲輝・遠田晋次

    2021年6月 ~ 2022年2月

︎全件表示 ︎最初の5件までを表示

担当経験のある科目(授業) 10

  1. 地圏環境科学実習Ⅰ 東北大学

  2. 基礎野外実習Ⅱ 東北大学

  3. 基礎野外実習Ⅰ 東北大学

  4. 地形学演習Ⅱ 東北大学

  5. 地形学演習Ⅰ 東北大学

  6. 環境防災論(オムニバス) 国際医療福祉大学大学院

  7. 自然地理学Ⅰ 東北学院大学

  8. 都市環境科学特別講義第4(オムニバス) 東京都立大学大学院

  9. 地理学Ⅱ 東京未来大学

  10. 地理学Ⅰ(地誌を含む) 東京未来大学

︎全件表示 ︎最初の5件までを表示

メディア報道 2

  1. 栗原で内陸地震の爪痕公開 発生15年

    読売新聞

    2023年6月5日

    メディア報道種別: 新聞・雑誌

  2. 水害リスク高い平野は「魔の沼」と呼ばれた“理由は7000年前の縄文時代に”身を守るため「地形を知り備えることが大切」宮城 執筆者本人

    tbc東北放送 Nスタみやぎ

    2023年5月25日

    メディア報道種別: テレビ・ラジオ番組