研究者詳細

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イトウ ユウジ
伊藤 優志
Yuji Itoh
所属
多元物質科学研究所 有機・生命科学研究部門 生命分子ダイナミクス研究分野
職名
助教
学位
  • 博士(理学)(東北大学)

  • 修士(理学)(東北大学)

e-Rad 研究者番号
20847206

研究分野 1

  • ライフサイエンス / 生物物理学 /

共同研究・競争的資金等の研究課題 4

  1. 酵素を用いたウイルスタンパク質の蛍光標識と一分子蛍光分光法によるダイナミクス計測

    伊藤 優志

    提供機関:Japan Society for the Promotion of Science

    制度名:Grants-in-Aid for Scientific Research

    研究種目:Grant-in-Aid for Early-Career Scientists

    研究機関:Tohoku University

    2024年4月1日 ~ 2027年3月31日

  2. 一分子蛍光イメージングを用いたヒトDNA複製開始因子の動態解明

    伊藤 優志

    2020年4月24日 ~ 2023年3月31日

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    当該年度は、1,6-ヘキサンジオール(1,6-HD)で細胞を処理したときの、クロマチンの動きの変化を調べた。初めに、Haloタグで標識したヒストンH2Bを発現する細胞を作製した。作製した細胞を蛍光色素TMRが結合したHaloTagリガンドで処理することで、ヌクレオソームを蛍光で標識した。斜光照明顕微鏡を用いてレーザー光を細胞に照射し、蛍光標識ヌクレオソームから放出された蛍光をCMOSカメラで検出した。ヌクレオソームの運動を自動追跡し、運動の速さの指標となる平均二乗変位を定量的に求めた。 HeLa細胞を1,6-HDで処理すると、クロマチンの動きが抑制された。続いて、液滴を溶かす作用が弱い2,5-ヘキサンジオールで細胞を処理したところ、クロマチンの動きが1,6-HDと同程度、抑制された。したがって、クロマチンの凝縮は、1,6-HDが液滴を可溶化する作用とは異なるメカニズムによって引き起こされていると考えられる。 次に、クロマチンの凝集が可逆的な反応か検証した。細胞を1,6-HDで30分間処理した後、1,6-HDを含まない液体培地で洗浄し、クロマチンの動きを観察した。濃度2.5%の1,6-HDで処理した細胞では、洗浄後にクロマチンの動きが処理前と同等に戻ったが、濃度5%, 10%の1,6-HDで処理した細胞では、洗浄後もクロマチンの動きが抑制されたままであった。このことから、高濃度の1,6-HDはクロマチンを不可逆的に凝縮させることが分かった。以上の結果に基づき、1,6-HDをクロマチンが関わる液滴に対して用いた場合、得られた結果を注意深く解釈・考察する必要があることを提案した。 また、ヒトDNA複製開始因子である、Treslin, TopBP1タンパク質にHaloTagを付加した細胞を作製した。両タンパク質を蛍光色素で標識し、斜光照明顕微鏡を用いて、ヒト生細胞内での運動を観察した。

  3. 一分子蛍光イメージングを用いたヒトDNA複製開始因子の動態解明

    伊藤 優志

    2019年8月30日 ~ 2021年3月31日

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    当該年度は、一分子蛍光顕微鏡を用いてヌクレオソームの動きを追跡した。具体的には、Haloタグを修飾したヒストンタンパク質H2Bを持つ細胞を作製し、その細胞に蛍光色素を加えることで、ヌクレオソーム一分子を蛍光で可視化した。 RNAの転写がヌクレオソームの運動に与える影響を検証するために、転写に関わるメディエータータンパク質複合体を分解した。初めに、ヒトHCT116細胞を使用し、オーキシンという薬剤に応答してメディエータータンパク質を分解するシステムを持つ細胞を作製した。その細胞を使用し、メディエータータンパク質の一つであるMED14を分解したところ、ヌクレオソームの動きがわずかに増加した。しかし、その増加幅は、転写阻害剤を使用した実験のものよりも小さかった。この結果から、クロマチンの架橋に対するメディエータータンパク質複合体の寄与は小さいということが示唆された。一方、HCT116細胞は、核のサイズに対して占める核小体の割合が大きいために、ヌクレオソームの動きの変化が小さかった可能性も考えられた。そのため、現在、別の細胞であるヒトDLD-1細胞を使用し、メディエータータンパク質を分解するシステムを持つ細胞を作製している。また、DLD-1細胞においても、転写阻害剤で細胞を処理したり、RNAポリメラーゼを分解したりすることで、転写が阻害されてヌクレオソームの動きが顕著に増加することを確認した。

  4. DNA結合タンパク質の標的認識確率による機能制御の解明

    伊藤 優志

    2017年4月26日 ~ 2019年3月31日

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    初めに、染色体DNAの構造を維持し、遺伝子発現の制御に関わるタンパク質である、建築タンパク質の大腸菌内のダイナミクスを調べる研究を行った。タンパク質として、FisとHU、Nhp6Aを用いた。大腸菌を培養して増殖させ、大腸菌内のタンパク質の運動を一分子蛍光顕微鏡を用いて観察した。Fis,Nhp6A,HUいずれも動かない分子が多く、6~7割ほどであった。この動かない成分は、タンパク質がDNAに安定に結合している状態に由来すると考えられる。一方、30~40%の分子は大腸菌内を拡散した。この成分の分子は、DNAとの結合と解離を繰り返しながら大腸菌内を拡散運動したと考えられる。3種類のタンパク質分子の拡散係数を定量的に求めたところ、HU,Nhp6A,Fisの順に早かった。 次に、転写因子の一種であるcAMP受容体タンパク質(cAMP Receptor Protein: CRP)の一分子観察を行った。eGFPを結合させたCRP(eGFP-CRP)を発現する大腸菌を培養し、一分子蛍光顕微鏡を用いた観察を行った。内在性のCRP存在下では、eGFP-CRP分子のほとんどが素早く拡散していた。一方、内在性のCPRをノックアウトした大腸菌では、遅い拡散をする分子の割合が著しく増加した。このことから、内在性CRPを持つ大腸菌では、内在性のCRPがCRPの標的配列に結合していて、eGFP-CRPが標的配列に結合できなかったと考えられる。 転写因子は核内や細胞全体から標的配列を探し出す必要があるため、素早く細胞内を拡散すると考えられる。一方、建築タンパク質はDNAと結合して染色体の構造を構築することが役割であるため、機能するためには局所的な運動で十分であると推定される。本研究で、タンパク質の機能の違いがダイナミクスの違いとして現れることを証明できた。