研究者詳細

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カスカベ ヨシタカ
粕壁 善隆
Yoshitaka Kasukabe
所属
高度教養教育・学生支援機構 グローバルラーニングセンター
職名
特任教授(研究)
学位
  • 工学博士(早稲田大学)

e-Rad 研究者番号
30194749

共同研究・競争的資金等の研究課題 10

  1. レーザーアシストイオン注入法によるシリコン・チタン不定比窒化物の物性と機能化

    粕壁 善隆, 須藤 彰三

    提供機関:Japan Society for the Promotion of Science

    制度名:Grants-in-Aid for Scientific Research

    研究種目:Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

    研究機関:Tohoku University

    2013年4月1日 ~ 2016年3月31日

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    電顕および電子エネルギー損失分光のその場観察から、TiHx中の水素の脱離が窒素注入初期段階で優先的に起こり、その後の注入過程で、Ti原子と結合した窒素原子数が徐々に増大することが分かった。以上より窒素を配位子として持つTi副格子の結合の強さの変化により誘起されたhcp-Tiの細密面の原子移動が注入窒素の占有によるhcp-fcc-Ti副格子のエピタキシャル変態において重要な役割を持っていること、さらに、hcp-Ti格子の窒素原子を含む八面体に隣接した単位胞の窒素のない八面体サイトの窒素の占有がN/Ti=0.25以上で優先的に起こり、hcp-fcc-Ti変態の核の成長を誘起することを明らかにした。

  2. シリコン・チタン窒化物及び酸化物の不定比物性と機能化に関する研究

    粕壁 善隆, 須藤 彰三

    提供機関:Japan Society for the Promotion of Science

    制度名:Grants-in-Aid for Scientific Research

    研究種目:Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

    研究機関:Tohoku University

    2008年 ~ 2010年

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    Ti薄膜中への62keVの窒素イオン(N_2^+)の注入による窒化チタン(TiN_y)膜の成長過程を原子レベルで明らかにするため、加熱や窒化によるTi薄膜中の水素あるいは窒素組成の変化およびその電子構造の変化を電子エネルギー損失分光法の可能なその場観察透過電子顕微鏡により研究した。Ti 副格子と配位子であるN原子との結合相互作用を考慮することにより次のことを明らかにした。すなわちhcp-Tiへの窒素注入により、hcp-Tiの原子配列の一部を引き継いでfcc-Tiの副格子がエピタキシャル成長し、fcc-Tiの副格子の八面体位置に窒素を吸蔵することで、TiN_yがエピタキシャル成長する。

  3. 不定比化合物シリコン・チタン窒化物の高機能化に関する研究

    粕壁 善隆, 粕谷 厚生, 須藤 彰三, 山村 力

    提供機関:Japan Society for the Promotion of Science

    制度名:Grants-in-Aid for Scientific Research

    研究種目:Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

    研究機関:Tohoku University

    2005年 ~ 2006年

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    不定比窒化チタン化合物(TiN_y)の電気伝導特性、拡散障壁特性、耐磨耗特性等がその組成および基板との配向関係に依存することが明らかとなり、基礎的および応用上の観点から、その形成過程の原子レベルでの解明が急務となっている。本研究では、イオン注入法によるTiN_y薄膜の形成過程を透過電子顕微鏡法および電子エネルギー損失分光法でその場観察・評価し、組成分析や分子軌道計算による電子状態の評価と合わせて、TiN_y薄膜の形成機構および配向の制御性等について原子レベルで明らかにした。NaCl(001)基板に室温あるいは250℃で蒸着したTi薄膜には、それぞれ、複数の配向性をもったhcp-TiとTiH_xが、あるいは単一の配向性をもったhcp-Tiがエピタキシャル成長していた。この蒸着Ti薄膜に窒素を注入すると、hcp-TiとTiH_xは窒化されて、優先的な配向性をもったTiN_yに変態した。この変態機構は、注入前の結晶の原子配列をたくみに受け継いだ"エピタキシャル"変態および注入原子による変態fcc-Tiの八面体位置の占有により起こることが見い出された。すなわち、hcp-Tiの中で広い空隙と高い電子密度をもつ八面体位置の、注入イオンによる占有を端緒としたTi副格子のhcp-fccエピタキシャル変態は、主に注入原子の2p軌道とチタン原子の3d軌道の混成による強固な共有結合の形成と注入原子の存在によるチタン原子間の結合の弱まりによって誘起された、(00-1)面内の<01-0>方向への(00-1)面のずれによって引き起こされたものである。以上のように、イオン注入によるTi化合物薄膜の配向性の形成過程に内包するエピタキシャル変態過程を原子レベルで制御することで、α-Sn半導体とAu電極界面のTiN_y拡散障壁層への応用および合成が困難であったバンドギャップ制御型機能性シリコン・チタン窒化物薄膜等の創製ができるようになると期待される。

  4. 反射高速電子回折・電子分光法による窒化チタン薄膜の高機能化に関する研究

    粕壁 善隆, 藤野 豐, 山田 幸男

    提供機関:Japan Society for the Promotion of Science

    制度名:Grants-in-Aid for Scientific Research

    研究種目:Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

    研究機関:Tohoku University

    2001年 ~ 2002年

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    不定比化合物窒化チタンはチタンと窒素の組成比によって金属性から絶縁性に変わり、チタンと配位子である窒素との結合状態も変化する。この窒化チタンを次世代のデバイスに応用するには、組成とともに変わるチタンと配位子との結合状態を明らかにし制御する必要がある。本研究では、反射高速電子回折法によりその場観察のできる超高真空装置中で膜厚100nmのTi薄膜を作製し、その薄膜に窒素イオン(62keVのN_2^+)を注入して、窒化チタン薄膜の形成過程をオージェ電子分光法、電子エネルギー損失分光法、透過電子顕微鏡法などを用いて明らかにする。Tiを蒸着した薄膜にはhcp-Tiの他にTiH_x、も成長していた。TiH_xの窒化ではfcc-Ti副格子の四面体位置の水素が脱離し、fcc-Ti副格子の八面体位置に侵入した窒素がTiと結合してTiN_xが成長した。水素の脱離は、プラズモンによる損失ピークの低エネルギー側へのシフトをもたらす。また、試料温度の上昇に伴って水素の脱離によるTiH_xの格子定数の減少が起こり、試料温度350℃ではTiH_xがhcp-Tiにすべて構造変態することも新たに見出された。一方、hcp-Tiを350℃まで加熱してもその格子定数に有意な変化は見られなかった。hcp-Tiの窒化では、hcp-Tiの局所的な原子配列を継承した変態によりできたfcc-Ti副格子の八面体位置に窒素が侵入し、TiN_yが成長した。プラズモンによる損失エネルギーを評価した結果、TiN_yにおけるTi3dとN2p軌道の混成した結合性軌道からなる価電子帯の電子密度が注入量の増大に伴い増加することが分かった。これは結合に関わる窒素量が増大するためと考えられる。クラスターモデルの分子軌道計算により、Tiの窒化とともにTi-Tiの結合が急激に弱まり新たに強いTi-N結合ができることが分かった。これらのことから、窒化チタンの物性を制御し高度な機能性を持っようにするにはTi-Nの結合状態を考慮して設計したTiN_yの薄膜をプラズモン測定による評価を行いながら製作する必要があるという指針を得た。

  5. イオン照射下における固体中原子移動機構の研究

    藤野 豊, 粕壁 善隆

    提供機関:Japan Society for the Promotion of Science

    制度名:Grants-in-Aid for Scientific Research

    研究種目:Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

    研究機関:Tohoku University

    2001年 ~ 2002年

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    イオンビーム照射・注入技術は半導体産業における不純物ドーピングや金属材料の表面改質技術など、広い分野で応用されている。しかしながら、イオンビームと固体との相互作用、あるいはイオンビーム照射によって引き起こされる材料特性の変化の機構については、まだ充分には解明されていない。本研究では、イオンビームと固体の相互作用およびイオンビーム照射による材料特性の変化の機構についての基礎的な知見を得る目的で、純Cu単結晶及びCu-lat.%Ni合金単結晶に、300keVのAu+イオンを室温で照射し、注入されたAu原子の深さ分布、及び照射損傷の深さ分布を,ラザフォード後方散乱測定法とイオン・チャンネリング法を組み合わせた方法により調べた。Au+イオンの注入量は2x10^<16>ions/cm^2であった。 純Cu単結晶及びCu-lat.%Ni合金単結晶における、注入されたAu原子からのラザフォード後方散乱スペクトルを比較すると、純Cuの深さ分布の半値幅は89nmでCu-lat.%Ni合金の半値幅53nmよりもAu原子が広く分布していることが分かった。またAu原子の注入による損傷の深さについては、純Cuの場合は506nmであり、Cu-lat.%Ni合金では336nmであった。一方、純Cuの場合、TRIM85コードによる注入Au原子の深さ分布の半値幅は29nmであり、損傷の深さは80nmである。純Cu単結晶とCu-lat.%Ni合金単結晶の場合で注入原子の深さ分布及び照射損傷の深さが顕著に異なる現象は、イオンビーム照射下における固体中の原子移動に関する従来から知られている機構のみで説明することは困難である。 我々は、本研究結果からイオンビーム照射下における結晶性固体中の原子移動に関して、これまでにすでに知られている機構に加えて、イオンビーム照射中に転位が移動し、そして、その移動する転位によって固体中原子の移動が引き起こされるという、これまでに報告例のない新たな機構が存在することを提案するものである。

  6. 反射高速電子回折法による窒化チタン機能性薄膜の原子レベル制御に関する研究

    粕壁 善隆, 山田 幸男

    提供機関:Japan Society for the Promotion of Science

    制度名:Grants-in-Aid for Scientific Research

    研究種目:Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

    研究機関:Tohoku University

    1999年 ~ 2000年

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    窒化チタンの物性はチタンと窒素の組成比によって金属性から絶縁性まで変わり、チタンと配位子である窒素との結合環境も変化する。この窒化チタンを次世代のデバイスに応用するには、組成とともに変わるチタンと配位子との結合環境をその場観察で明らかにし制御する必要がある。そこで、本研究では、反射高速電子回折法によるその場観察のできる超高真空装置中で膜厚100nmのTi薄膜を作製し、その薄膜に窒素イオン(62keVのN^+_2)を注入して、窒化チタン薄膜の成長素過程を透過電子顕微鏡法で評価するとともに、電子エネルギー損失分光法による電子状態評価の結果と合わせて、窒化チタン薄膜の物性の発現機構及び制御性に関する知見を得てきている。蒸着Ti薄膜にはhcp-Tiの他にTiHxも成長していた。TiHxの窒化ではfcc-Ti副格子の四面体位置の水素が脱離し、fcc-Ti副格子の八面体位置に侵入した窒素がTiと結合してTiNyが成長した。水素の脱離は、プラズモンによる損失ピークの低エネルギー側へのシフトをもたらす。hcp-Tiの窒化では、hcp-Tiの局所的な原子の配列を継承した変態によりできたfcc-Ti副格子の八面体位置に窒素が侵入し、TiNyが成長した。プラズモンによる損失エネルギーから評価した結果、TiNyにおけるTi3dとN2p軌道の混成した結合性軌道からなる価電子帯の電子密度が注入量の増大に伴い増加することが分かった。これは結合に関わる窒素量が増大するためと考えられる。クラスターモデルの分子軌道計算により、窒素の注入とともにTi-Tiの結合が急激に弱まり、新たにできたTi-N結合がTiNyの高硬度をもたらすことが分かった。これらのことより、窒化チタンの物性を制御するための指標としてプラズモンによる損失エネルギーおよび分子軌道計算による結合度合が使える可能性を明らかにした。

  7. 応力腐食割れに免疫なステンレス鋼の開発

    渡辺 豊, 粕壁 善隆

    1998年 ~ 1999年

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    本研究は、希土類元素セリウムを適量添加することによりステンレス鋼の応力腐食割れに対する耐性を飛躍的に向上させるとともに、微視構造の観点から割れ抑制機構を明らかにすることを目的とするものである。とくに鋭敏化熱履歴後の高温水中での応力腐食割れ感受性の改善効果に主として焦点を当て、本年度は、下記の成果を挙げた。 (1)セリウムの微量添加によりSUS316鋼において鋭敏化熱処理後の応力腐食割れ感受性が抑制される場合のあることを前年度に見いだした。本年度は、割れ抑制効果が発現する条件範囲をセリウム添加量、熱処理条件の双方の関数としてより詳細を明らかにした。600℃〜700℃の温度範囲で溶接熱影響を模擬した数種の熱処理を施した試料を用意し、高温高圧水中での応力腐食割れ感受性を割れ破面率および割れ発生個数に基づいて評価した結果、無添加材に対してEPRレシオ10%程度までの鋭敏化度を与える鋭敏化熱処理条件において、セリウム添加の効果が現れることが判った。添加量としては、0.01wt%において割れ感受性が最も改善されるが、0.04wt%以上の添加では改善効果は現れないことが判った。 (2)高温水中で形成される皮膜に及ぼすセリウム添加の効果をオージェ電子分光法、X線回折法などにより調べた結果、セリウム添加により皮膜厚さが30%程度小さくなる傾向が認められたが、その他顕著な特徴は見いだされなかった。 (3)セリウム添加による割れ感受性改善効果の発現機構の解明を目的として、鋭敏化特性をセリウム添加量、熱処理条件の双方の関数として詳細に調べた。セリウム添加は材料の鋭敏化およびその回復速度をともに減速する効果があることが判った。これは、原子半径の大きなセリウムが固溶することによってCrの拡散速度が低下することに依るものと理解された。この効果により鋭敏化初期において割れが抑制されることが判った。

  8. 電子線蒸着・ホットウォールエピタキシ-法による金属・半導体超格子の表面・界面制御

    粕壁 善隆

    1994年 ~ 1994年

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    絶縁体下地であるNaCl下地上でのTi-Pd系金属超格子の初期成長過程を観察・評価し、これらのエピタキシャル配向関係、界面の整合状態などに関する知見を得た。まず、250℃のNaCl上でのTi-Pd系金属超格子のエピタキシャル配向関係について述べる。 Pd/Ti膜(NaCl上にTiを成長させ、そのTi上にPdを成長)の場合、 Pd(001)//Ti(0335)//NaCl、Pd<110>//Ti<2110>//NaCl<110> Ti/Pd膜(NaCl上にPdを成長させ、そのPd上にTiを成長)の場合、 Ti(0001)//Pd(001)//NaCl、Ti<2110>//Pd<110>//NaCl<110> であることが解った。いずれの場合もTi-Pd界面における非晶質層の形成を示す明確なデータは得られなかった。これらの配向性の相違は蒸着初期の界面におけるTi及びPd原子の拡散挙動の相違、界面の格子整合状態の相違などから生じていると考えられる。Pd/Ti膜の場合、蒸着のごく初期過程(Pdの膜厚が2nm程度)で、もうすでに六万晶系(hcp)Tiの上に面心立方(fcc)構造の結晶が成長していた。Pdの膜厚が5nm程度になるとfcc格子の格子定数(0.389nm)はバルクのPdのそれとほぼ一致していた。これらの事から、Ti上にPdが成長する際には、拡散があるとしても非常に僅かで、比較的明確な界面ができていると考えられる。このとき、hcp構造の八面体サイトを作る正方形の(0334)面の4回対称性を受け継いでPdの(001)面が核形成・成長すると、上述の配向関係が得られる。Ti/Pd膜の場合、PdリッチなPd-Ti合金相の形成を考慮して界面状態を考慮しなければならないことが解った。

  9. ヘテロエピタキシ-法による半導体超格子の作製と評価に関する研究

    大坂 敏明, 粕壁 善隆, 矢田 雅規

    提供機関:Japan Society for the Promotion of Science

    制度名:Grants-in-Aid for Scientific Research

    研究種目:Grant-in-Aid for Developmental Scientific Research (B)

    研究機関:Waseda University

    1990年 ~ 1991年

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    平成2年度は、Insb/αーSn/InSb系ヘテロ構造について極性物質を介した極性物質の成長に着目し、特に極性の伝播の機構を明かとした。その結果の概略を以下に示す。 (1)InSb(111)Aと(111)B基板を超高真空中で加熱清浄化およびホモエピタキシャル成長させ、十分に清浄な表面を得た。その後、50℃に保持したこれらの基板上へSnを蒸着した。さらにこのSn膜を所定の温度に昇温、保持し、その上へInsbをヘテロエピタキシャル成長させた。なお、これらの成長膜の構造観察にはRHEEDを、組成分析にはAES/ELSを用いた。 (2)αーSn/InSb{111}上におけるInSbの成長を、αーSnの膜厚を変化させて観察した。まず、αーSnの膜厚が大きい場合(20ML以上)、αーSn/InSb{111}の表面は、3×3構造を示し、その上でのInSbの成長は基板側の極性に影響されずにバルクαーSn結晶上のInSbの成長となる。この時InSbはA面で成長し、また、InSb/αーSn界面はInーSn結合となることがわかった。 (3)一方、αーSnの膜厚が小さく、10ML以下の場合については、基板側のInSb{111}の両極性を受け継いでInSbが成長する。この極性の伝播には、Sbの存在が深く関わっていることが明かとなった。InSb{111}上におけるSb膜の成長を詳細に調べると基板が(111)Aの時には、その界面が急峻であるが、(111)Bの時には、InSbの表面のSbがαーSn中へ拡散し、なおかつ膜厚が小さいうちはSn表面にやや濃化していることが判った。このSbはαーSn(111)面上でterminateした構造をとり、その表面は1×1周期となる。この上にさらにInSbを成長させるとInSbはB面で成長する。つまり、基板側の極性が伝播することになる。ところが、急峻な界面をもつαーSn/InSb(111)A上では、αーSn表面が本来の3×3超構造表面を持つので、InSbを蒸着するとA面で成長する。以上のように、本研究において、InSb/αーSn/InSb系ヘテロ接合において、極性の伝播するメカニズムが初めてつきとめられた。 平成3年度は、極性伝播のメカニズムに関するより詳細な知見を得るために、出発基板表面として利用したInSb(111)Aー2×2およびInSb(111)Bー2×2の表面構造を電子回折法により明かとした。その結果の概略を以下に示す。回折強度測定の結果、Aー2×2表面とBー2×2表面は異なった構造を持つことが明らかになった。さらに、Patterson解析からいくつかのモデルを導出し、今までに提唱されているモデルとあわせて最小二乗法を用いて最適化を行った。 (1)InSb(111)Aー2×2 InSb(111)Aー2×2の強度分布は、全反射X線回折法等によって提案されているVacancy buckling modelから期待される強度分布と極めて良い一致を示した。したがって、InSb(111)Aー2×2の構造は、このmodelを基本構造として持つという従来の結果が支持される。 (2)InSb(111)Bー2×2 InSb(111)Bー2×2の強度分布は、InSb(111)Aー2×2のそれとはおおきく異なり、独自の構造を持つことを示唆した。強度解析の結果、Sb最外層のT_4サイト上にSb trimerが吸着したモデルのみが信頼度因子(R)が12%となり、モデルから計算される回折強度の値と測定値との違いは測定誤差のオ-ダとなった。このモデルは、他の実験結果(AES、理論計算等)からも支持される。

  10. ホットウォ-ル法によるテルル化カドミウム単結晶薄膜の育成とその評価

    内田 和喜男, 粕壁 善隆, 山田 幸男, 吉田 和彦, 須藤 彰三

    1989年 ~ 1989年

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    II-VI族化合物中、CdTeはn型p型の制御が可能な唯一の物質であり、光電素子の素材(禁制帯巾約1.5eV)およびCdHgTe系赤外線検出器などの基板として重要である。CdTe単結晶薄膜は、現在おもにMBE法、HWB法などによって製作されているが、化学量論的に正しいCdTe単結晶薄膜を得ることは困難を伴なっている。本研究においては、ホット・ウォ-ル法においてCdTe蒸気源とともに補助蒸発源を設け、Cdの蒸気圧を調整した。基板がイオン性結晶と共有性結晶とではCdTe層の性質がどのように異なるのか、また成長方位によって育成膜の性質が影響を受けるのかなど、初期核形成時のダイナミックスを含めて検討を進めている。同一の育成条件の下で育成した膜でも厚さが約1桁異なる場合がある。厚いほうの膜は主にスパイラルモ-ド、薄いほうの膜は層成長モ-ドによって成長が進むからであると考えられる。スパイラル成長モ-ドは良質CdTe膜を得るためには障害となるから、これを防ぐために基板表面の処理および基板表面における組成元素の過飽和度の制御を十分に行なわなければならない。BaF_2(111)面上にPbTe(111)バッファ層を入れることによって、スパイラル・モ-ドを抑制できることを明らかにした。この場合にはBaF_2(111)上に直接育成したCdTeに比べて発光効率が著しく下がることが確認された。現在はBaF_2(111)へき開面とGaAs(100)面をケミカル・エッチしたものを基板として使っている。GaAs(100)基板の場合にはCdTeは(100)成長をする場合と(111)成長をする場合とがあるという報告があるが、本実験においてはCdTe(111)/GaAs(100)は得られていない。現在、RHEED装置とホット・ウォ-ル装置との連結が完了した段階であり、初期核形成をin situで観察できればCdTe(111)/GaAa(100)とCdTe(100)/GaAs(100)との成長の違い並びに光学的性質の差異なども明らかにできるものと期待される。

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